ICBLプレス・レリーズ)

        「ランドマイン・モニター報告2003の注目点」

      200399
JCBL抄訳

    対人地雷の一般的使用の減少は認められる。しかし、対人地雷全面禁止条約を守っていない国がある。ICBLはそれらの国に対して警告を発する。

200399日、ICBLは「ランドマイン・モニター報告書2003年版」を発表した。同報告書によれば、この1年間で地雷除去の援助資金が30%増額され、地雷の一般的使用は劇的に減少した。

ICBL国際大使で、1997年ノーベル平和賞をICBLと共同受賞したジョディイ・ウイリアムは言う、「我々は世界から地雷を取り除き、人命と手や足の損傷を救う為に大きな一歩を踏み出しつつある。しかしそれで満足してはならない。未だに地雷禁止条約に参加することを拒否し続けている国がある。地雷は依然として埋められ、世界のどこかで地雷犠牲者の数が増えつつある。」

「ランドマイン・モニター報告書2003年版」(826ページ)によれば、各国に保有されていた対人地雷から5200万個が廃棄された。その中、この1年間では69ヶ国で400万個が廃棄された。地雷生産国は過去の50ヶ国以上から15ヶ国に減った。1990年代の半ば以降、目立つ対人地雷の輸出が認められなかった。地雷除去およびその他の地雷対策活動は拡大し、毎年の地雷による新規の死傷者数は減少した。

現在、136の国々が対人地雷全面禁止条約を批准または加入した。(訳註:報告書では134ヶ国であるが、85日にガイアナが、93日にベラルーシが加入したので136ヶ国となる。)これらの国々は自国の地中に埋められた地雷を10年以内に除去することが要求されている。前回の報告書の125ヶ国から、11ヶ国が条約を批准または加入した。その中には世界で最も地雷が多く埋められているアフガニスタン(2002911日加入)が含まれている。ベラルーシは400万個の対人地雷を保有しており、世界で最大の地雷保有国である。136ヶ国のほかに、条約に署名をしたが未だに批准をしない国が12ヶ国ある。

この報告書の編集責任者であるHRWのメアリイ・ウエアハムによれば、「地雷を使用する政府、反政府組織の数は減少を続けている。対人地雷を堂々と埋めているのはミャンマー(ビルマ)とロシア政府だけである。20025月からの調査期間内では少なくとも6つの政府が対人地雷を使用した。すべて条約未署名の国々で、インド、イラク、ミャンマー(ビルマ)、ネパール、パキスタン、ロシアであった。イラク軍は米軍のイラク攻撃の以前とその最中に地雷を敷設したが、米軍と同盟軍はイラクで地雷を使用しなかった。2003年報告書の地雷使用国は6ヶ国であった。2002年報告書の9ヶ国、2001年報告書の13ヶ国からみて減少である。」

締約国の中で、ICBLがもっとも注意を払っているのはトルコメニスタンである。訓練用として69,200個もの対人地雷を保有している。この数字は許し難く、不法とも言える。訓練、研究開発用の対人地雷について、条約は「絶対に必要な最小限の個数」と述べており、多くの締約国は数百個から23千個を保有している。

地雷除去、地雷回避教育、地雷生存者援助のための地雷対策援助費は2001年に落ち込んだが、2002年には3900万ドル(371億円)と、前年比で30%の増加をした。1992年からの累計は17億ドル(2040億円)であり、1997年に条約への署名開始以来で12億ドル(1440億円)である。(訳註:この中で、日本政府の2002年援助額は55億円、1998年からの累積援助額は103.4億円だった。)

しかしながら、ICBLの地雷対策作業部会の共同議長で、ノルウエーのNGONPAに所属するサラ・セッケネスは言う。「2002年に増額された援助資金の三分の二がたった一つの国、アフガニスタンに向けられた。地雷対策費の大幅な増額と、費用効率の高いことは認めるが、不幸な事に、これは各締約国の埋設地雷の除去期限が近づいている問題と、地雷に関するグローバルな問題に見合っていなかった。」

ランドマイン・モニター報告書によれば、地雷の被害を受けている国が82ヶ国あり、その中で45ヶ国が締約国である。条約によれば10年以内に埋設地雷を取り除かねばならない。200212月にコスタリカは除去期限より約7年早く地雷除去完了の宣言をした。一方、2002年中に、地雷被害を受けている16ヶ国からの地雷の除去の報告がなく、25ヶ国から地雷回避教育実施の報告がなかった。

2002年から2003年にかけて、65ヶ国で新たに地雷死傷者がでた。その大部分の41ヶ国は戦争中でなく平時であるに関わらずにである。2002年の死傷者のうち、軍人はたったの15%であった。

ランドマイン・モニター報告書の犠牲者援助コーディネーターのシェレー・ベイリィは言う。「2002年に報告された死傷者の発生率は減少したとはいえ、地雷は余りに多くの犠牲者を出し続けている。地雷で負傷し、生き延びている人の数が世界中で増え続けているのに、彼らのリハビリと社会復帰のための援助は絶望的に少ない。」

ランドマイン・モニター報告書2003年版「地雷のない世界に向けて」はICBLの第5回目の年次報告書である。この報告書は2003915日(月)から、地雷被害国タイの首都バンコックで開催される、第5回 対人地雷全面禁止条約締約国会議に出席する各国の外交官に配布される。

ランドマイン・モニター報告書作成の指揮は、ICBL5つのメンバー団体で構成されるコア・グループによってなされている。90ヶ国の110人のリサーチャーが各国の情報を蒐集し、分析してこの膨大な報告書の原稿を作成する。この市民社会主導による活動が、世界で始めてNGOを一つにまとめて、持続的で、調整のとれた、組織的な方法で、軍縮に関連し、かつ人道的な条約である対人地雷全面禁止条約を、各国政府が如何に履行しているか?をモニターし報告することが出来るようになったのである。

報告書の全文と関連文書は、英語のほかフランス語、スペイン語ほかの各国語でオンライン入手可能である。パスワードを受取るのにlm@icbl.orgEメールをすること。99日のグリニッチ標準時900からwww.icbl.org/lm/2003で報告書を入手できる

詳細について、またはインタビュウについては下記にコンタクトされたい。

1.    Sue Wixley, ICBL, in Bangkok at +66(0)5-164-2679

2.    Mary Wareham, Human Rights Watch, in Washington DC at +1(202)612-4356 or +1(202)352-2968

3.     Email. media@icbl.org

註1: コア・グループの構成団体

(1)  Human Rights Watch (グループ長)

(2)  Handicap International Belgium

(3)  Kenya Coalition Against Landmines

(4)  Mine Action Canada

(5)  Norwegian Peoples Aid

2:日本の章のリサーチャ:清水俊弘、北川泰弘、目加田説子、加藤美千代、大島義幸

3:中国の章のリサーチャ:長有紀枝、菊地康子、武田勝彦、難民を助ける会

4:2003年版の出版へ資金協力した政府:オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリー、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウエー、スウェーデン、スイス、英国、EC委員会。

 (日本政府は、ICBL調整委員である長有紀枝氏の要請を受けて2000年版に資金協力をした。しかし、それ以降は予算項目がない事を理由に協力を断っている。)


JCBL プレス・レリーズ)

ランドマイン・モニター報告書2003年版の「日本の章」の注目点

1.     日本の2002年の地雷援助額は54億9900万円(49.4百万ドル)で、EC委員会(38.7百万ドル)、ノルウェイ(25.2百万ドル)、ドイツ(19.4百万ドル)を抜いて第1位。

2.     その結果、1998年から5年間の累積が103億4000万円となり、1997年12月の小渕外相(当時)の公約の5年間で100億円の公約を突破した。

3.     2002年日本の援助額の48.3%がアフガニスタンに向けられた。2002年始めに外務省に通常兵器室が創設されたこと。室長の進藤雄介氏がドイツ大使館在勤中に、亡命中のカルザイ氏(現アフガニスタン暫定政府大統領)と同国の再建策を論じ合った仲で、2002年1月のアフガニスタン復興会議を東京に招致するキッカケとなったこと。はこの大きな資金援助と無関係ではないと思われる。

4.     オタワ条約が発効した1999年3月現在で約100万個あった対人地雷の廃棄が、2003年2月8日に完了し、条約第四条の「4年以内に保有地雷を廃棄」の条件を守った。

5.     2003年に始まる5年間の地雷援助額を国際公約するよう、JCBLが小泉首相に求めたに関わらず正式回答がないばかりか、2003年3月にカンボジアで開催された地雷会議で日本政府代表は今後の援助額はプレッジせず、Case by Caseで行う、と発表をした。

6.     Case by Caseの援助は、現在のODAのベースである「要請に基く援助」で。「保有地雷の4年以内廃棄」、「埋設地雷の10年以内除去」を自力で実施できる見込みがない国に対する援助を、日本が積極的に行う態勢がないことの表れである。要請がなくとも、条約を履行する力のない国を援助する援助方式を作ることが望まれる。

7.     2002年9月の第4回締約国会議で、日本はカンボジアと共に「地雷除去、地雷回避教育、地雷除去技術 専門家会合」の共同報告者に選任されていた。来週9月15日からの第5回会議で共同議長に選任される。2004年11月にはケニアのナイロビで条約再検討会議が開催されるので、それまでの1年間で、最も重要な「地雷除去、地雷回避教育、地雷除去技術」に関する条約文の見直しについて、議長として、締約国の意見をまとめることが期待される。

日本の地雷関連援助額の推移

1998年以前   30  百万ドル          36 億円

1998年     7.8                   9.0

1999年         14.7                  17.5

2000年         12.2                  14.2

2001年          7.2                   7.64

2002年         49.4                  54.99

1998以降の合計 91.3百万ドル      10,340.0億円     

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